本『ロボットという思想』 浅田稔 NHK出版

 

人間と同じような構造(体)を持ったロボットを作り、それに学習・発達をさせることで、「人間」についてもっとよく知ろうとする、「構成論的アプローチ」についての本です。

印象に残った一番のポイントは、「体の構造が脳を作る」という部分。

脳には、体と独立した機能があるのではなく、体との関係で必要となった機能があるはずです。であれば、脳の構造は、実際に出来上がりつつある体を使って作り上げなくてはならないし、そうすればいい。つまり、胎児や乳幼児の段階で、体を使いながらいろいろな関係性を学習をしてゆけばいい、ということです。

脳の配線も人間の体の構造の一部だし、体だって他の部分と影響を相互に与えながら作られていくものなのだから、「生得的な脳の機能」というものを、どこかで線を引いて考えても仕方がないということかもしれません。

学習も、どこかの段階から始まって終わるるものではなくて、人間の構造を形成する、発生や成長の延長なのでしょう。発生や構造化のプロセスを、自分の体、親の体から、外部の環境へとだんだんと広げて自分に取り込んで行くということなら、「完成した状態」というものも無いのかもしれません。

そして、脳の機能が人間の体の形によって構造化されるものならば、人間のような体を持たないものが、人間のような心や知能を持つことはない、というのもこの本の主張の一つになっていると思います。

それでは、人間とは異なる体の形を持つものは、その形(外とのかかわり方)に応じて、人とは異なる心や知能を持つのでしょうか。話をする自動車や、引きこもってネットばかり見ている知能というのはありうるのでしょうか。そしてそういうものができた時に、彼らと対話することが、人間にはできるのでしょうか。それとも、人間と同じものだけを、知能と呼ぶことになるのでしょうか?

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