『ホッブス リヴァイアサンの哲学者』田中浩 岩波新書

ホッブスは1588〜1679年のイギリスの人で、近代以降の民主主義の思想に影響を与えた人ですが、その思想にはエピクロスなどの原子論の影響があるといいます。そこで少し関連する本を読んでみました。

デカルトが1596〜1650年のフランスですから、ほぼ同時代の人です。

本自体は、大量のカッコ書きや繰り返し、語の重複などが多く、読みにくい本でした。

 

時代背景

イギリスでは 1215年に、課税に評議会の承諾を必要とする「マグナ・カルタ」を認めさせて以来、国王と議会が対立していましたが、1642年には内乱「ピューリタン革命」が始まります。

同時にこの時代は軍事革命の時代だったようで、イングランドはバラバラの状態でしたが、ヨーロッパの各国は常備軍を持ち始めていたようです。

ホッブスは、このような状況において、国王と議会に権力が分離して、統一した力である「主権」が欠如していることが内乱の原因であると考え、その状態を解消するための政治思想を提案したそうです。

原子論や幾何学のように社会を作る

その思想は、古代ギリシアのエピクロスの原子論に大きく影響を受けていて、ホッブスの思想の重要な要素である「人間の本性」や「自然状態」「社会契約」などもエピクロスの思想に既にあったものなのだそうです。

また、ホッブスはユークリッドの『原論』に出会い「幾何学と恋に陥った」と述べていたり、ホッブスの政治学は「幾何学のように正確であるといわれる」そうで、こちらの影響も少なくなさそうです。

つまり、社会をそれ以上分解できない原子である「個人」に分解し、その性質を公理にして社会を演繹しようとした様です。

個人の基本性質としては「個々の人の生命の安全」を考え、そこから「主権が集中した国家」という解が導出できることを示そうとします。

それが、人間が予め持つ「自然権」を放棄して、多数決で選んだ代表が作った法律に従う国家を作ることで、バラバラな「自然状態」から、権力の集中した状態に脱出する、というものでした。

社会を記号で表現したというよりは、記号や計算として社会を作ったと言ったほうが良さそうです。

計算というのは、思っている以上に私達のあり方に深く関わっているのかもしれません。