言葉の分析だった論理学は、形式化されることによって、推論の構造の全体を調べられるものに変わったようです。
今回は論理学の最終回ですが、論理学が哲学の一分野であることを知ったのをスタート地点に、まとめてみました。結果として古代ギリシアからの歴史を巡ることになりました。
抽象的なものをこねくり回すのが哲学、というイメージをもっていたのですが、生き残りをかけた良さ・正しさの議論に、論証で決着をつけようとする営みでもあるように思えます。
引き継ぐポイントが違うため、色々なものが哲学と呼ばれていますが、論理学は、誰に対しても中立に白黒をつけようとした結果、形式化されて計算になった、という部分もあるのかも知れません。
参考文献 論理学編
『数学の想像力』 加藤文元 筑摩選書
個別記事
『論理学史』山下正男 岩波全書
論理学の歴史の本は、探してみるとあまりなく、たどり着いたのが少し昔のこの本です。
いきなり「半順序構造」から始まるので面食らいますし、構成が複雑で読みやすい本ではないですが、色々と勉強になる本でした。
論理学をちょっとかじっていると、論理とは何なのかがわからなくなってしまうことがありました。この本を読むと、一口に「論理学」と言っても、歴史的に色々な物がごたまぜになっていて、それが論理についてのイメージを何だかよくわからないものにしているのがわかります。
言葉を使った推論や論証をどう言う形式で進めるのかを追い詰める「アリストテレス→ストア派→記号論理学」の流れがある一方で、中世には意味論的な方向が加わります。
その後、近世には、論証の形式はそっちのけで「概念」や「判断」などの心理主義的な議論や「弁証法」なども論理学として議論されたようです。
さらには、「科学は何故正しいと言えるのか」を議論するための、「帰納」や「アブダクション」なども論理学として盛り込まれて行ったようです。
色々な要素が「論理学」に詰め込まれていることを意識できると、少しは見通しが良くなるのではないでしょうか。
『アリストテレス全集』 1・カテゴリ論、2・分析論 後書 岩波書店/ 『形而上学』 アリストテレス 岩波文庫
『カテゴリ論』『分析論』は、アリストテレスの「名辞論理学」を書くために参考にしましたが、正直消化しきれていません…。
存在論も、ちょっとバッサリやり過ぎたかとも思うので、気になる方は『形而上学』も直接ご確認ください。
『ユークリッド原論とはなにか』 斎藤 憲 岩波科学ライブラリ
直接的に論理の本ではありませんが、ユークリッドの『原論』について、その背景や実際の型式等について語っている本。定理や公理が「呪文」の様に呼びだされて、次の論証につなげてゆくようなあり方を示唆しています。
歴史的には、魔術も数学も論理学も、はっきりと分けられたものではなかったのかも知れません。