アリストテレスの作った論理学は、今は「名辞論理学」と呼ばれています。
「これはxです」という表現を、物事の属性を表すものだと考えたときに、属性同士の関係を使って推論をするもの、と考えると、おおよそ理解できそうです。
つまり、「ネコ」という属性(タグ)がついている「モノ」には全て「動物」という属性もついていて、「動物」の属性がついているものにはすべて「いずれ死ぬもの」の属性がついているのなら、「ネコ」には「いずれ死ぬもの」の属性がついているだろう…。というわけです。
こういう推論の形から、「アリストテレスの三段論法」とも呼ばれているようです。
さらに言えば、アリストテレスのカテゴリー(範疇論)も、こうして集めたタグの関係性を整理するのなら、階層関係が良さそうだ、と言っているもののように思えます。
アリストテレスは「体系」が強調されることも多く、実ははじめの頃はとっつきにくく感じていました。何でも体系でぶった切ろうとするようなやつなのではないか、と。(ヘーゲルが何でも三つでぶった切ろうとするように… )
ですが、読んでいるうちに、この人は、何にでも興味を示して、いろんな考えをコレクションしまくったあげくに、それをどうやって並べようかをあれこれ考えている人、に思えてきて、今では好きな哲学者の一人です。体系に合わない物をかんたんに捨ててしまうような人なら、万学の祖になんてならないでしょうから。
参考文献ー論理学編
『数学の想像力』 加藤文元 筑摩選書
『論理学史』山下正男 岩波全書
論理学の歴史の本は、探してみるとあまりなく、たどり着いたのが少し昔のこの本です。
いきなり「半順序構造」から始まるので面食らいますし、構成が複雑で読みやすい本ではないですが、色々と勉強になる本でした。
論理学をちょっとかじっていると、論理とは何なのかがわからなくなってしまうことがあります。この本を読むと、一口に「論理学」と言っても、歴史的に色々な物がごたまぜになっていて、それが論理についてのイメージを何だかよくわからないものにしているのがわかります。
言葉を使った推論や論証をどう言う形式で進めるのかを追い詰める「アリストテレス→ストア派→記号論理学」の流れがある一方で、中世には意味論的な方向が加わります。
その後、近世には、論証の形式はそっちのけで「概念」や「判断」などの心理主義的な議論や「弁証法」なども論理学として議論されたようです。
さらには、「科学は何故正しいと言えるのか」を議論するための、「帰納」や「アブダクション」なども論理学として盛り込まれて行ったようです。
色々な要素が「論理学」に詰め込まれていることを意識できると、少しは見通しが良くなるのではないでしょうか。
『アリストテレス全集』 1・カテゴリ論、2・分析論 後書 岩波書店/ 『形而上学』 アリストテレス 岩波文庫
『カテゴリ論』『分析論』は、アリストテレスの「名辞論理学」を書くために参考にしましたが、正直消化しきれていません…。
存在論も、ちょっとバッサリやり過ぎたかとも思うので、こちらにあたりましょう、ということで『形而上学』も。
『ユークリッド原論とはなにか』 斎藤 憲 岩波科学ライブラリ
ユークリッドの『原論』について、その背景や実際の型式等について語っている本。定理や公理が「呪文」の様に呼びだされて、次の論証につなげてゆくようなあり方を示唆しています。
歴史的には、魔術も数学も論理学も、はっきりと分けられたものではなかったのでしょう。