中世の哲学、いわゆる「神学」や「スコラ哲学」には、何だかとっつきにくいものを感じていました。そのイメージを払拭できないかとこの本を読んでみたのですが、思った以上に面白い本でした。
中世のヨーロッパははアリストテレスの説が大好きだったようです。それなのに、キリスト教の教えと衝突するその説はそのままではおおっぴらに研究できません。
そのため、あの手この手で、言い訳の説を生み出す側と、それを異端として排除する側の、わけのわからない論争が延々と繰り広げられました。それが、中世哲学だったようなのです。
12世紀ルネサンス
ギリシアを飲み込んで、古代の地中海世界を席巻したローマが東西に分裂したあと、 古代のギリシアの思想は、イタリアを中心とした西ローマからは消え、ギリシアを含む東ローマからは異端として追い出されました。
しかし、それらの知識はアラビアへと渡り、研究をされることになります。イスラム世界では、聖職者でなければ特に制限なく研究をする自由があったようです。そのかわり聖職者の知識には影響せず、時代が悪くなるにつれて、失われていったようです。
そうした古代ギリシアの著作が 12世紀前後に、西欧に流れ込みました。イベリア半島やシチリアで、アラビアの注釈がつけられたそれらが翻訳されたその時代は、「12世紀ルネサンス」や「大翻訳時代」と呼ばれます。その中にアリストテレスの著作が含まれていました。
続きを読む 『中世の覚醒』リチャード・E・ルーベンスタイン ちくま学芸文庫