電気を使った初期のコンピュータは真空管を使った「電気」の性質を使って作られていましたが、それでは高速化や小型化、安定性に限界がありました。
そこで、もっと微細な「電子」の性質を使ったコンピュータへの挑戦がされるようになります。そこで使われるようになったのが「半導体」です。
半導体の原理は量子力学によるもので、SiやGeなどの原子を上手いこと結晶にして並べると、電子が移動するハードルが、外からの電気でコントロールしやすい大きさになる…というものらしいのですが、私の理解不足と、量子力学までやってたらキリがないのとで、触れていません。
この技術の発展には、当時のソ連(今のロシアを中心とする連邦) vs アメリカの宇宙開発競争(大陸間弾道弾の競争)も関係していたようです。非力なロケットしか作れず遅れを取ったアメリカが、ロケットに乗せるコンピュータの重さを少しでも軽くしたくてお金をかけたことが、その実現に影響をしたようです。
この技術を当時の日本が聞きつけて、ラジオやら電卓やらをに使ったのが、かつての日本のこの分野での発展の要因だったようです。
また、この時代に作られたソ連のロケット「ソユーズ」は改良されながらも、未だに使われているのが恐ろしいところです。
コンピュータの歴史の最終回として
今回がコンピュータの歴史の最終回ですが、かなり難儀しました。
コンピュータの原理(チューリングマシン)は見たから、歴史でもやるか。という軽い気持ちで、昔のコンピュータを並べて見ていこうとしていたのですが、何か物足りなさを感じていました。
それは、計算機の歴史と一口に言っても、雑多な物が混ざっているように思えたからです。
計算する機械の発展は、数学の実用的・実際的な側面である、お金や、科学・技術の計算と密接に関係している様なのですが、それらの関係が、調べてもなかなかつかめず、悪戦苦闘しました。
結局分かってきたのは、ソロバンや機械式のデジタル計算機と、つい最近まで使われていた「対数尺」などのアナログの計算機は、その用途や原理において異なるものである、ということです。
まず、デジタルな計算機は、主にお金や人の数のように離散的(デジタル)な数を計算するための道具として、利用・研究されてきた歴史があるようです。こちらは実用上、1円・1人まできっちり計算することが求められます。
もう一方の、アナログ計算機は、割と最近にデジタル計算機によって駆逐されるまで、計算尺や微分解析機のような形で、科学・技術の計算機として使われていました。
科学の計算で扱うのは、本来は連続量、精密に測れば測るほど値が詳細に決まってゆくような、アナログの量です。そんな、数字にしたら無限に続くような量をどうやって扱うのか、という問題は、対数の計算などを通してヨーロッパの数学「解析」を生み出します。
その結果、アナログ量の計算を離散的な記号を使って行う方法と、逆に離散的な数の計算をアナログの量に対応させて行う方法とを、相互に関連付ける事が可能になります。
それが、一方では対数尺のようなアナログの計算機を生み出し、もう一方では量の計算にデジタルの計算機を使うことを可能にします。
しかし、デジタルな計算は技術的に手数が多くて遅く、一方のアナログ計算機には精度や自由度に限界があり、しばらく併存をすることになりました。
それが、最終的に高速なデジタルの電子計算機の出現により、記号を使った計算が、全てをまとめることになったようです。
今回の話は、それをなんとか表現しようと、悪戦苦闘をした結果です…。色んな要素を詰め込み過ぎでなんだかわからなくなっている気もしますが、ちょっと広がったコンピュータの歴史、になっているといいです…。
参考文献
『数学の歴史(放送大学)』三浦伸夫 放送大学
『数学の歴史 I,II』メルツバッハ&ボイヤー 朝倉書店
『数の大航海』志賀浩二 日本評論社
『小数と対数の発見』山本 義隆 日本評論社
『16世紀文化革命 上・下』 山本 義隆 みすず書房
『計算機の歴史』ハーマン・H・ゴールドスタイン 共立出版
『チャールズ・バベジ』 オーウェン・ギンガリッチ編 ブリース・コリアー著 須田廉子訳 大月書店
『EDVAC草稿』
http://fab.cba.mit.edu/classes/862.16/notes/computation/vonNeumann-1945.pdf
『半導体の話(全34回)』
https://www.shmj.or.jp/dev_story/seaj.html
『ドリーム 私達のアポロ計画』(本、映画)
映画はタイトルが『ドリーム』のみになっていて、何の映画かわかりにくいですが、ロケットの開発計画に携わっていた黒人女性の計算手(コンピュータ)の、実話ベースのお話です。