IBMの脳チップ

IBMが脳からヒントを得たチップ(の新バージョン)を作った、という発表をしているようです。

http://www-06.ibm.com/jp/press/2014/08/0801.html

http://japan.cnet.com/news/service/35052072/

http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1408/29/news049.html

以前にも発表が出ていた物の、新チップということのようです。

http://wired.jp/2013/09/02/truenorth/

さて、これによって人工知能の実現が一気に近づいたりするものなのか?というわけで、ざっと見てみた感想です。
個人的な理解によるものですので、間違ってたらごめんなさい。

今のコンピュータで、できないようなことができるのか?

まず、「ノイマン型アーキテクチャに基づかない」チップだ、ということです。コンピュータは、チューリングマシンという抽象的な機械を、何らかの方法で実現したものと言えますが、実現するにあたり、とる方法の一つが、ノイマン型アーキテクチャです。そして、今あるコンピュータのほとんどは、「ノイマン型」という方法で作られています。

つまりこのニュースは、「チューリングマシンを今までと違う方法で実現・実行するチップができた」ということですので、計算時間を別にすれば、できることはだいたい今までと同じなのではないでしょうか。

どんなものなのか

動作原理は基本的にニューラルネットワークと同じように見えます。物理的な並列計算、半非同期(沢山ある部分が、各々自分のタイミングで計算できるので、他の部分の作業が終わるのを待たなくていい)なところが特徴でしょうか?

今あるCPU(ノイマン型アーキテクチャ)を置き換えるものか?

このチップが得意な分野もあるが、不得意な分野もあると思います。プログラミングの方式も大きく変わりますので、今までの資産も使えなくなるでしょう。人間による使いやすさ(プログラミングのしやすさ)というのは重要な要素です。
ですので、全部置き換えるようなことはなくて、GPUのように、ノイマン型のチップに追加して、得意な分野のみの処理をするものとして扱われるのではないでしょうか。得意な部分は、ニューラルネット同様に話者認識、画像認識などの認識処理などのようです。

これで考えるコンピュータができる?

速度を別にすれば、原理的にできることは今までと変わらないので、いま知能ができているのなら、速度や電力の問題を解決するかもしれませんが、そもそも考えるプログラムを作れないので、これによっていきなりできる、ということはないと思います。

脳そのものの動作ができる?脳を転送できる?

ちょっと飛びますが、脳を模しているということは、脳が転送できるのでは?とか思うかもしれません。しかし、ニュラルネットワークは、ニューロンをヒントにしてますが、ニューロンの動きを忠実にシミュレートしているわけではありません。実際のニューロンには色んな種類があって、各々電気的な反応の仕方に特徴があるようですし、ニューロン以外の細胞(グリア)も何やら通信をしていたりします。実際の動作にはそういう違いが影響する可能性があるので、単純に脳を転送できる、などということは無いのでしょうか?

 

以上のようなわけで、知能の問題を解決する特効薬では無いですが、実利用や応用が広げることで、知能の実現を後押しするのかもしれません。