『数の大航海』志賀浩二/『小数と対数の発見』山本義隆

スコットランドの発明家、ネイピアによる「対数」の発見という、同じ題材を中心に扱った二冊です。

「対数(log)」は高校の数学で習うと思いますが、指数関数の逆関数で、特に底が10の対数である常用対数は、数の桁数に対応する関数のようなものです。

なぜそれが、何冊も本が書かれるような題材となるかと言うと、「科学のための数学」「ヨーロッパの数学」である「解析学」を作り出すのきっかけとなったからのようです。

二冊のうち、『数の大航海』は数学の歴史の中での位置づける観点が色濃く、対数がその後解析学をどのようにに発展させることになったのか、まで扱っています。

対して『小数と対数の歴史』はタイトル通りの、小数がヨーロッパで使われるようになったことと、対数や科学との関係を主に扱っています。

ヨーロッパの数学「解析」

古典的な数学は大雑把に言って、古代ギリシアの幾何学、アラビアの代数、ヨーロッパの解析の順に発展してきたようです。

アラビアの代数は、相続の計算などお金の計算をきっかけに発展したのに対して、ヨーロッパの解析は、特に占星術のための天体観測の結果を扱うための数学として発展をしたようです。

観測結果は、お金とは違って最小単位(1円)がなく、どこまでも精密にできますが、このような数を扱うための数学が、「解析」となってゆく訳です。

そのため、どこまでも精密に表現をするための「小数」と、その計算(掛け算)を簡単するための「対数」とが、同時に関連しながら利用されることになりました。

対数には、以下のような関係があります。

log(a) + log(b) = log(a * b)

つまり、対数を使うと、掛け算を足し算に変換することができます。そのため、とても桁の多い小数同士の掛け算が、対数の表を引くことと足し算をすることで、ずっと簡単にできるわけです。

そして、実用を目的としているために、必要な桁数を具体的に計算をして決めるテクニックが強化されていったようです。

ところがその対数、実用として役に立つにも関わらず、掛け算や足し算だけでは表現できない、「超越関数」という、それまでの数学からはみ出た性質を持っていました。しかも、それまでも知られていた三角関数のように、具体的に対応するものがありません。

このような抽象的なものに、実際に計算をして数を決める様々なワザで挑んだ結果、小数から実数の概念を生み、級数展開などを使って偏執的に無限に切り刻んで調べる、ヨーロッパの数学「解析」が発展するきっかけとなったようです。

さらに、実用のために対数を「一覧表」にしたために、それが「数同士の関係」としてとらえられ、「関数」の概念の形成にも影響を与えたようです。関数は、どんな計算方法であるかではなく、数が対応さえしていればなんでもよい、より抽象的なものになっていったようです。

さらに、『数の大航海』によれば、負の数の対数の対数を中心にして、複素関数論ま で発展していったようです。

分かっていなかったな…

私は、高校時代(だいぶ経っているのですが)の解析を、微分・積分の式の変形として、何となく代数の延長のように扱っていたようにおもいます。

関数を偏執的に切り刻んでどうなっているのか調べるような解析のイメージは薄く、その後の大学の数学でも、ずっとあいまいなままだったように思います。

こういう動機がわかっていれば、もう少し理解できたのではないか…とか、今更ながらに思いますが、おそらく読んでも理解できなかったのでしょうね…。