「本の感想」カテゴリーアーカイブ

2016年に読んだ本ー古代ギリシア

昨年は、私にしては沢山読んだのですが、消化しきれなかった結果、こういうことになりました…。出来る範囲でここに…。

このエントリは古代ギリシア中心に。

アリストテレス『弁論術』、『ニコマコス倫理学』

『形而上学』『心とはなにか』を読んで、アリストテレスへの興味が深まって読んだのがこの二冊です。とくに『ニコマコス倫理学』は、心を機能主義的に捉えた時に、倫理というものをどう考えたら良いのかを、さらに人工知能の倫理はどういうもので有りうるのか、を考える材料になるのではないかと感じています。

対して弁論術は、弁論における様々な要素を検討しています。一方で形而上学のように不動のもの、などという話をしていながら、もう一方では弁論などの確定しない法則を観察・分析して記述する。柔軟で自由な思考に圧倒されます。

プラトン『国家』『プロタゴラス』『ソクラテスの思い出』『テアイテトス』『プラトンを学ぶ人のために』

プロタゴラスはなんとか書きました。

アリストテレスを読むうちに、その源流であるプラトンについての興味もでてきたので、いくつか読んでみました。特に『国家』を読むと、アリストテレスの扱っている論題の多くが、プラトンによって示されたものであることがわかります。プラトンの結論には色々と疑問もありますが、問の立て方や解決方法のアイデアは流石です。

プラトンは厚さの割に読みやすいのですが、内容の消化はなかなか大変なので、『プラトンを学ぶ人のために』も補助線として読んでみました。複数著者の本のため、品質は色々でしたが、助けになる本でした。

古代ギリシア『歴史 トゥキディデス』『ソフィスト』『民主主義の源流』

『ソフィスト』についてはなんとか書きました。

アリストテレス、プラトンから、古代のギリシアがどういう世界だったのかに興味を持って読んでみたものです。特に、ギリシア世界の全体を巻き込んで、30年もの間スパルタとアテネが繰り広げたペロポネソス戦争を、同時代人のトゥキディデスが書いた『歴史 トゥキディデス』の迫力には圧倒されます。

本:『プラグマティズム入門』伊藤邦武 ちくま新書 (1・基礎づけ主義とプラグマティズム)

プラグマティズムは、「道具主義」や「実用主義」などと訳されている、哲学的な立場の名前です。

科学でわかることだけが真実だ、とか、どんなことにもその価値には優劣はない、のような考え方だと理解されることもあるようで、今ひとつ何だかわからなかったので、この本を読んでみました。

わかりやすい本なのですが、すんなりとは理解できなかったので、補助線などとともに書いておきます。

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『数学の想像力 正しさの深層に何があるのか』 加藤文元 筑摩選書

数学の思想史というか、哲学史の本です。序盤は数学は音楽に似ている、などの話で今ひとつピンと来なかったのですが、中盤からは「正しさ」についての考え方の変化が語られてゆきます。

学校の数学でも「証明」によって正しさを示していますが、これを始めたのが紀元前5世紀の古代のギリシアで、それは他の文明には見られない特異なことであった様です。

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本:『物の本質について』ルクレティウス・樋口勝彦訳 岩波文庫

古代ギリシアの原子論は、デモクリトス、エピクロス、ルクレティウス、と引き継がれましたが、実際に残っているものの殆どはこの本の著者ルクレティウスのこの本によるもののようです。

元はエピクロスの考えを詩にしたものだったそうですが、この本では普通の文章として訳されています。

 

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『ホッブス リヴァイアサンの哲学者』田中浩 岩波新書

ホッブスは1588〜1679年のイギリスの人で、近代以降の民主主義の思想に影響を与えた人ですが、その思想にはエピクロスなどの原子論の影響があるといいます。そこで少し関連する本を読んでみました。

デカルトが1596〜1650年のフランスですから、ほぼ同時代の人です。

本自体は、大量のカッコ書きや繰り返し、語の重複などが多く、読みにくい本でした。

 

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本:『ソフィスト』田中美知太郎 講談社学術文庫

「ソフィスト」というと、偽の知識で人を欺く人、というような意味になってしまっていますが、古代ギリシアのソフィストは、お金をもらって道徳を教えることを職業としている人たちだと考えられ、そういう人たちを必要とする理由があったようです。

 

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本:『ソクラテス以前以後』F.M.コーンフォード 山田道夫訳 岩波文庫

イギリスの古典学者マクドナルド・コーンフォードによる少し古い本で、1932年のものです。

ヨーロッパ中心のギリシア持ち上げを感じないでもないですが、古代ギリシアの考え方の流れが短くまとまっていて、扱いやすいでした。

この本では、古代ギリシアの思想をソクラテスを中心に、「イオニア」「ソクラテス」「プラトン・アリストテレス」に分けています。

そして、それまでのギリシアの思想の伝統から方向性を大きく変えたところに、ソクラテスの重要さがある、ということのようです。その方向性とは、自然の研究から、人間及び社会の研究へと哲学を展開させた、ということです。

 

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本『ソークラテースの思い出』クセノフォン 佐々木理訳 岩波文庫

ソクラテスの弟子だったクセノフォンが書いた、プラトンについての文章です。

ざっと読んだ感想としては、やたらと理屈っぽい論語、という感じですが、プラトンの『プロタゴラス』よりは、ソクラテスが現実の人間っぽく感じられました。

4巻構成で、1巻がソクラテスの有罪判決に対する反論。2,3巻は弟子などとソクラテスとの議論で、道徳的な指導を理屈っぽくしています。4巻で若干哲学的な議論がされています。

 

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本:『プロタゴラス』プラトン・中澤務訳 光文社文庫

古代ギリシアの哲学者プラトンが書いた本で、ソクラテスを主人公に、ソフィストであるプロタゴラスとの議論を書いた本です。

この話の時代設定はプラトンが生まれる15年前で、実際の話というよりはプラトンによるフィクションだと思ったほうが良いようです。

 

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